随分前の話になってしまったけど、これは記念として記録しておかなくちゃ。
3月にあった空手の県大会で、
すずが悲願の初勝利を飾ったのだ。
しかも、
準優勝!!
いやいや、ぶっちゃけてしまうと、準優勝と言っても大したことはない。
1勝しただけだから
。
女子の階級はどこも、総じて選手数が少ない。すずのエントリーした階級(小学2年女子)も、出場選手はたったの3人。その3人での総当たり戦だから、2勝すれば優勝、1勝でも準優勝なのだ。
ちなみにりょうがエントリーした小学3年男子の階級では、12人が出場。男子は人数が多いのでトーナメント戦である。

それでも、準優勝は準優勝。表彰式では壇上で賞状とトロフィーが貰えるし、実績としても入賞扱いになる。
今回は嬉しいことに支部全体でも入賞者が多くて、写真や名前が道場に貼り出されていた。自分の表彰されている写真が壁に貼られているのを見て、そりゃぁすずの嬉しそうだったこと。
いやぁ、今回の大会にあたっては、空手仲間のパパやママ達のアドバイスを受けて、パパとママもちょっと頑張ったのだ。
やっぱり週2回練習に参加するだけでは、実戦での試合勘みたいなものは掴めないということで、家でも自主練をやろうと決断。
キックミットを購入し、本番の1ヶ月くらい前から、週末の夕方は2人のパンチやキックを受けたり、実戦と同じようにヘッドガードやサポーターを付けた状態で、試合時間の1分半を計測しながら、2人で組手をやらせたりしていた。
道場で先輩相手に組手をするのとは違って、お互い知り尽くした相手だから、遠慮もなにもなく思い切ってぶつかり合うことができる。
大抵は、すずの強烈なパンチにりょうが力負けしてベソをかくことが多かったけれど、りょうの本気の蹴りも結構効果的で、すずが「りょうくん痛いよ!」と怒り出すことも時々あった

。
パパも毎週付き合っているうちに、いつも蹴られるスネの一部が痛み始めてしまい、ついには病院に行かないと歩くのにも支障をきたすようになるくらいだった。
そこまで傷むなんてパパも弱いっちゃ弱いんだけど(笑)、子供達の手加減のないキックは、ミットで受けないと本当に怪我をしそうなくらい強くて痛い。まだまだヘナチョコだと思っていたけど、4年通う間に2人とも、それなりの力をつけていた。
そうやって、試合に対する恐怖感が薄れ、スピードや持久力が少しずつ身についてきたかなと思われた矢先、
すずが39度近い熱を出した。大会2日前のことだ。
直前だというのに練習もできず、練習どころか食欲もなかった。それ以外の症状はなく、今思えば緊張からくる発熱としか思えないのだが、ここまで練習してきて大会不参加じゃシャレにならない。とにかく休養をとり、当日はなんとか熱も下がったけれど、そんなわけで体調も万全とは言えなかった。

すずの初戦の相手は、下級のオレンジ帯の子だった。帯の色は下級でも、他道場の子はどこも強い。
しかも、同じ2年生だというのにずいぶん大きな子だ。身長は5cm以上、体重に至っては10kg以上もの差があった。相当攻めてかからないと、押しの強さだけで負けてしまう。
多分、1年前のすずだったら、ロクに前にも出られないままビビって負けていたと思う。でも、今年は違った。
試合開始と同時に、果敢に攻めた。相手の子がデカいので、突いても突いてもあまり後ろに下がってはくれなかったが、向こうがあまり試合慣れしていなかったようで、すずの勢いに気圧されてくれたのが幸いした。
技こそ決められなかったものの、終始すずが前に出る形で試合は進み、結果、優勢勝ちを収めたのだ。
大会出場3回目にして、初めての勝利!格下の子が相手でも、技が決められなくても、勝利は勝利だ。
「まずは1勝」という目標を達成して、すずは本当に嬉しそうだった。相当な自信につながったと思う。
ママも、本当に嬉しかった。年甲斐もなく、コートの場外で
「やった!!」と叫んでしまったくらい(笑)。
すずが練習の成果を出せたのも嬉しかったし、毎週の自分達のサポートも無駄ではなかったのかもと思えた。
この勢いに乗って、もう1勝!
あと1勝すれば優勝だ!!
と、本人も周囲も盛り上がったが、なかなかそう簡単にはいかなかった。運悪く、初戦と2戦目の間が5試合程度しかあいていなかったため、15分程度の休憩を挟んで立て続けに試合をやる羽目になった。
次の相手はこれが初戦、しかもすずと同じ黄帯。気力体力、ともに万全の状態。一方すずは、初戦で力を使い果たし、ロクに休みもとれないままの2戦目。おまけに前日まで熱で寝込んでいて、食べ物もあまり口にしていない。
試合開始から30秒経ったあたりから、相手のペースに巻き込まれてフラフラし始めた。スタミナ切れは誰が見ても明らかだ。

当然負けて、すずは悔し泣きをしていたが、それでも
1本負けすることなく、最後まで1分半戦いきったことは立派だ。最初の30秒はすずも結構いい動きをしていたし、もっと持久力をつければきっといい試合になっていたはずと信じたい。
次への目標ができて、すずもモチベーションが上がった様子だった。
ここまで書くと、めでたしめでたしのサクセスストーリーなんだけど・・・。そう単純には終わらせてくれないのが双子の宿命か。
ブログにするのが遅くなったのも、この後がゴタゴタと続いたからな訳で。
すずの2試合が終わってしばらくした後、今度はりょうの試合があった。すずに続き、りょうも力を出し切って頑張れ

と勢いづいたのだが・・・
開始早々、相手の子はすごいスピードで突進してきて、まず一発、りょうに上段蹴りを決めた。見事にりょうの側頭部に当たり、技ありを取られた。
まあ、試合はまだ始まったばかり。まだまだ大丈夫だよ!と声をかけたのも束の間。
試合再開と同時に、相手の子はまたもや突進してきた。そしてさっきと全く同じように、りょうの側頭部めがけて、上段蹴りを決めたのだ。
りょうは、その技を手で払うでもなく、逃げるでもなく、突っ立ったままでまともに受けた。
再び、技あり。合わせ技1本で、りょうは負けた。
試合時間、約10秒。写真を撮る暇もないくらいの速さだった。
あまりにもあっ気ない幕切れに、パパもママも唖然としてしまった。
ずっと練習してきた結果が、これかよ。
本人も、呆然とした顔で戻ってきた。
悔しいとかいう以前に、何がなんだかよく分からないうちに終わってしまった、といった感じだった。

正直なところ、りょうは同年代の男の子に比べたら体も小さいし力も弱いけど、この1ヶ月の練習を見ていて、もう少し頑張れるだろうと思っていた。
今までの大会では、りょうは毎回1本負けで、1分半まともに試合をしたことがない。だから
今回は自ら攻めて、勝っても負けても、まずは1分半を乗り切って欲しいと期待を持っていたのだ。
それが、この結果。試合時間も今までで一番短く、しかも何もせずに終わった。言いたかないが、デビュー戦よりも情けない内容だった。
ずっと練習に付き合っていたパパの落胆ぶりはすさまじく、「りょうはこれ以上、もう無理かもな・・・

」と諦めの言葉を口にする始末。
ママも腹が立って、りょうにブツブツと小言を言い続けた。本人が、試合の終わった直後こそしょげていたものの、すぐに立ち直って何事もなかったかのようにヘラヘラ振舞っているのが、余計に腹立たしかったのだ。
本人が言葉もないほどに落ち込んでいたら慰めもしてやるが、むしろ試合が終わってホッとしたような顔をしているんだから、こちらも「一体今まで4年間、何やってきたんだよ!」とイライラもするってもんだ
せっかくすずの勝利で盛り上がっていたのに、りょうの情けない敗北でその嬉しさも半減。お祝いする気も失せてしまった。
どんよりした気分のまま、晴れ晴れとした顔をしたすず以外はみんな言葉少なく、家に帰ってきた。
りょうに改めて聞いてみると、やはり
何度やっても試合が怖いのだと言う。試合自体が怖いから、前に出ようと思っても出られないし、技を出すことも、受けることもできなくなるらしい。
しかも
負けが続いて、「もう自分は勝てない」と思い込んでいる。一方のすずが初勝利をゲットしたのも目の当たりにして、完全に自信もやる気も喪失したようだった。
パパも「もう、あいつは限界じゃないか?怖がりなのに、まだ4年もよく持った方だよ」と言うし、ママもあの試合を見て、ようやく踏ん切りがついた。
好きでないものを長々と続けるより、ここらですずと離れて、他に好きなものを探す方がいいのかも。せっかくここまで頑張ってきたのに、もったいないけど・・・
で、4月いっぱいで、りょうだけ空手を辞めることにしたのだ。すずはすっかり自信がついて「1人でも空手続ける」と言っているし、大丈夫だろう。
それで先日の稽古前、先生に辞める報告をしに行った。
先生が驚いて理由を尋ねるので、本人の言葉やこれまでの経緯を話したところ、先生はりょうを呼び寄せて、直接話をし始めた。
「りょう、試合はみんな怖いんだぞ。お前、試合だけじゃなくて練習も怖いのか?」
「うーん・・・、練習は怖くないです。」
「じゃ、稽古自体は嫌いじゃないのか?ここへ練習に来るのは嫌か?」
「ここへ来るのは嫌いじゃないです。みんなもいるし。」
先生はママに向き直って、仰った。
「お母さん、すずとりょう、全て同じペースで進んでいかなきゃダメですかね?」
ちょっと、言葉を失ってしまった。頭をガツンとやられた気分だった。
そうだ、そうなのだ。それこそが、我が家の永遠のテーマなんだ。
2人は、個性も違えば価値観も、得手不得手も違う。2人が同じ事をやっていても、親は常にそのことを意識して接してやらなければならないんだった。
いつもそのことは頭にあったはずなのに、忘れていた。というか、意識しているつもりだけど、いつもどうしても忘れがちになってしまう。
空手だってそうだ。先生の仰る通りなのに、どうしても2人に同じだけの結果を求めてしまう。
それは、
2人がお互いに引け目を感じることなく一緒にステップアップして欲しいからというのが理由だけど、結局それって、
そうなってくれた方が、親の気持ちがラクだから、なのかも。
2人の間で差が開いていくのは、遅れをとっている方へのフォローも大変だし、こちらの精神的にもキツいから。

「これだけ練習したんだから、それだけの成果を出せ」と2人にはハッパをかけていたけど、成果の出るタイミングは個人によって違う。4年練習したからといって、2人とも同じように成果が出るとは限らない。
しかも、4年と言っても、最初の2年は幼稚園生。本当に成果が出始めるのは、これからかもしれないのに。
分かっていたはずなのに、判ってなかった。
先生は、
「試合にしても昇級審査にしても、こちらから強制して出させることはしません。本人の自信がついて、今ならやってみたいと自分から思えるタイミングで参加する形でもいいんじゃないでしょうか。稽古自体は嫌いじゃないようですし、もう少し様子を見てみたらいかがですか?」と仰った。
稽古の後でも、先生はりょうと話をしてくれたようだ。帰宅後改めて話をしたら、「りょうくん、もう少し頑張ってみる」と言い始めた。
「でも、試合が怖くて出られないんじゃ、目標がないじゃない。何のために空手を続けるの?」と聞いたところ、しばらく考えて、「学校で嫌なヤツにいじめられても、負けないで立ち向かえるように頑張る」。
一応もっともらしい理由が出てきたので
「じゃ、それならそれでもいいけど。でも、
お母さんはいずれはりょうにも試合に出てもらいたいし、りょうが試合で勝つところを見てみたいよ。りょうと一緒に喜びたいし、やっぱり空手やってて一番嬉しいのって、試合で勝つことだと思うから」とだけ、言っておいた。
という訳で、紆余曲折があった末、りょうも今まで通り、空手を続けるということで落ち着いた。
ゴールデンウィーク明けから、普段の稽古とは別の「実戦基礎クラス」という練習メニューが、新しく始まる。試合のための特化した練習だそうだが、選手クラス向けほど高度な内容ではないらしい。
希望者だけが参加すればいいメニューなのだけど、先生はりょうにも声をかけて下さったようで、今のところ「りょうくん、基礎クラスで練習したい!!」とやる気になっている。
彼のいつもの単なる好奇心からの発言かもしれないが(笑)、一応やる気を見せてはいるので、じゃあ行ってみたら、とは言ってある。空手の稽古が週3回になるから、送り迎えは大変なんだけど
すずはすずのペースで、りょうはりょうのペースで(でもダラけないで)、頑張っていってくれたらいい。
ママも結果を焦らず、とにかく長い目で見守るしかないのかな・・・。せっかちな性分にとっては難しいけどね・・・